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コーチングコラム

21世紀の人材育成への視点

第8回 : マネジャーを育成する(2)

組織の成果に責任をとる人であるマネジャーの共通する仕事は5つあるとドラッカー博士は書いています。
すなわち、以下の5つです。

  1. 目標設定
  2. 組織化
  3. 動機づけとコミュニケーション
  4. 評価測定
  5. 人材開発

それぞれの仕事を遂行するための能力や技能が必要であることは当然です。
目標設定能力、意思決定力、管理能力、コミュニケーション能力、自己管理能力などが求められるはずです。
これらの中で最も重要なものとしては目標設定能力があげられるでしょう。マネジャーは自分の部門の成果、他の部門への貢献を目標として示すことが期待されます。目標設定のためには目標や価値観に対する洞察力があるということが前提になります。これについては「目標管理」に関してお話する機会がありますので、そこに引き継ぎましょう。

さて、マネジャーは資源を組織化しますが、あらゆる資源の中でも人は特別な存在といえるでしょう。
人は特有のニーズを持ち、それぞれの反応をします。それらに対応するわけですから人に対するマネジメントは簡単ではありません。それを行うに当たって、まず前提として人は資源にあふれた存在であり、人は成果を創り出し、貢献したいと思っていて、それを通して自分のなりうる存在になりたいという欲求を持っているのだという見方をすることが大切です。それぞれの人が有している強みを引き出し、それを生産に結び付けていくことがマネジャーの仕事のひとつです。
そのために、以下の3つがマネジャーの仕事として職場で実現される必要があります。

  1. 成果に焦点を当てること。
  2. 従業員はその職務に応じて実行責任を取ること。
  3. 適材を適所に配置すること。

人に対するマネジメントは人の動機づけと関連があります。アメと鞭は動機づけの道具のひとつです。
英語にも似た表現があります。キャロット&スティック、つまり人参と棒と言います。
「人参と棒は確かに動機づけの道具だ。人参と棒によって動かそうとすれば、部下はロバのように仕事をしてくれることだろう。ロバ以上の仕事を期待するならば人参と棒によっては動かさないことだ。」(ジョン・ホイットモア)
......いかがですか。すばらしい指摘ですね。

動機づけに関して付け加えると、「人は自分の理由によって動く」 という原則を忘れないようにしたいものです。
私たちに出来ることは、人が自分自身を動機づけるように効果的な影響力を与えることが出来るのです。そういう意味では、人はマネジメントするのではなく、リードするということがより大切でしょう。ここから優れたマネジャーはリーダーシップへの道を歩むことが選択肢の中に入って来ます。

最後に自己管理能力に関係して時間管理について簡単にまとめておきましょう。
プレイイングマネジャーは時間管理のプロになりませんと、自分の仕事だけに埋没してしまい、部署全体や部下たちへの配慮がなくなってしまいがちです。時間管理(タイムマネジメント)と日程管理(スケジュールマネジメント)とは異なるものです。
日程管理は簡単に言えば、他の人との約束、つまり会議とかアポイントメントとか締切りとかを忘れないようにするためのものです。
それに対して、時間管理は「起きてほしいことが起きてほしい時に起きるように先行管理すること」です。時間管理を通して先行管理の仕方を学んでいくと課題設定と解決力が身に付き始めるのです。

能力の高いマネジャーをどのように育成するのかは重要な課題です。
研修に参加させて、管理者としての心得と仕事を覚えてもらうというだけでは期待通りの人材を生み出すことは困難です。理想は研修機会に加えて、モデルとなりうる上級管理者(上司)のもとで日常的な職務を通して学び、その上司からコーチングを受けることだと思います。
知識は必要です。そして知っていることを実行できるようになることがもっと必要です。実行できるようになるためのプロセスを設計することは人材育成を担当する人の仕事です。

またマネジャーとして求められる能力や技能の中には、比較的早い段階から学習可能なものがあります。これらについて長期的視点から有能なマネジャーを育成するために学習機会を設けるということが大切ではないでしょうか。
このような学習機会はすべての従業員を対象に行われるべきです。はじめから選抜して特定の従業員にのみ次のレベルへの学習機会を提供するのは害のほうが大きいのではないでしょうか。

第9回 : 課題設定と解決能力(1)

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